入り江にて

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小春日和の休日、午後から電車を乗継いで浦賀へ。
以前、横須賀美術館でもらった「横須賀美術館てづくりおさんぽマップ」を携え、
京急浦賀駅を背に歩きだす。
警察署を過ぎしばらく行くと左手にクレーンや鉄のやぐらが見える。
おさんぽマップには、浦賀ドック(住友重機械工業(株)浦賀工場)とあり、
もう閉鎖されているが、幕末から艦船を造っていた一号ドック、
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当時の面影にフランドル積みのレンガ塀が一部分、残っていた。
ドック前バス停辺りから旧浦賀道へ入り、古い商店や民家の並ぶ道を行くと、
叶神社の石段から七五三詣りの家族連れが降りてきた。
手水所で清め、前を通らせて頂きますと社に手を合わせ、
海がわの道へでると「浦賀の渡し」の看板が目に入る。
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乗船者は自分ひとり、水面のきらきら、波にまかせて浮いているカモメや
遠くの運搬船を眺めながらゆっくりと航行、程なく対岸の東浦賀へ。
この日の目的地、東岸渡船場隣りにある“ギャラリー時舟”は、
逗子のCが「とても気持ちの好い場所です、是非に」と、その個展初日に到着。
波先の反射が天井に映り、たゆたう光りと影の小景をうっとりと眺める。
展示スペースは船をイメージして作られた舳先と船尾のある六角形で、
建物のあちらこちらには、ごつい金具のあの船の丸窓が嵌まっている。
Cの夢絵日記も、穏やかな光りと風に浄化されたよう。
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夕方までぼんやりと過ごし、帰りの渡し船には蓮華ちゃん母子と乗船。
船頭さんが、「ぐるーっとまわってくコース?」なんて訊くもんだから、
「そんなのあるんですか?」と訊き返すと「ないけど…」
と云いながらも入り江のなかをゆっくりとおおきく弧を描きながら
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見えるのは遠い町灯りや真ん丸に近い眩しい月だけで、
それがぐるーっとまわるもんだからもう暗くて何処をどう行っているのか、
夜空と海が繋がって月に少しずつ近くなっていくようで、眩しくて目を瞑る。

夢は秒針と秒針の動くあいだにも、挟みこまれている。
nn

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