散歩 モノクローム

雨上がりの曇天、低く垂れ込めた雲と冷えた空気のあいだを歩きだす。
逗子からトンネルをふたつ抜け、
乳白色に包まれた山並みを眺め、
車のナンバーに語呂合わせをし、
年末から頭の中で廻っている立体模型をなおも廻し続ける。
みそひともじにならないことばをならべ、
ちいさな店先をぼんやり眺めては、行き交う人のない道を往く。
前を歩いていた男の人と柴犬がヒョイと海側の小路にはいるのでそちらを見ると見覚えのあるほそ道、
あとに従いついていくと県立近代美術館葉山のそば、そのまま真っ直ぐくだれば水平線が見える道。

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館内にはいり、チケットに日付スタンプを押してもらう。
ロシアとソヴィエト時代のポスター展に殆ど人の居ない、監視員のほうが多いくらいの展示室を進む。
最後の展示室で映画を観るも、古いグレートーンの美しさより、激昂する人や音楽の
おどろおどろしさに参ってしまい裏の海岸へ出る。
逃げた先の波は荒れ、見渡すかぎり重たい雲が蓋をしている。
こちらも灰色の世界、僅かに海面の甕覗色が目を惹きつける。

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白い波濤に光を探り求め、入り江のカーヴを歩く。
砂地に惑星を見止め、御用邸監視の目をくぐり抜けるべくもなく、
モノクローム・フィルムに波砂雲の淡い距離を押し、巻きつける。
館内にもどり、ロシア文字でカードを作る一隅で遊び、天井近くまで埋め尽くされたソヴィエト時代を眺める。
帰り道、近くまで来たのでと断り、蓮華ちゃんちにタッパーウエアを取りに寄ると、ケーキや夕食をご馳走になる。
同じ週の或る晩、横須賀のドンちゃんがふらりとやって来て、毎度興味深い話の数々、翌日のごはん会にお呼ばれする。
新年も野良猫よろしく、あちらこちらでお世話を頂きながら歩を進める。

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               「松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて 
         ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム」
               は神奈川県立近代美術館葉山で1月26日まで。
nn

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