白い日

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新しい年が暖かく明けた十日すぎ、凍るような空気に吐く息は白く、
厚い雲に覆われた地上を薄い青紫色の車が走っていきます。
海のおもては深く鈍く輝き、光りを内包した雲を映しながら、
月の作用を密かに受けているようでした。
車を止め、国道沿いの歩道から小さな階段を十数段上がり、
硝子戸を右へ引くと、薪ストーブの温かな煙りと匂いに満たされた室内を、
日本の古き佳き道具たちがひっそりと埋め尽くしていました。
   
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ミルク硝子のランプシェード、蛇腹式カメラ、白と紺の潔い杯、
白い瀬戸物で出来た端子類、半球金縁の華奢な硝子器、
重厚な蝶番や錠前、火鉢、扉、柱、欄間などが
それぞれ所定の位置に整頓され仕分けられております。
灰色のつなぎを着たあるじは短いキセルをふかし、
薪ストーブの炎を見詰めていました。
奥のほう、格子戸や板切れや大黒柱がそれぞれに立てかけてある
一郭では、黒いコートを着た北欧の男性が、
太い柱に手のひらを当ててしばらくのあいだ立ち尽くしていました。
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