朝まだき

夏は子どもの頃のように早起きしてしまう。
四時を過ぎるとあたりはほの明るくなり、鳥のさえずる声がにぎやかに聞こえてくる。
それが落ち着くと蝉がジージーとはじめる。
今年はまだ八幡さまの蓮を見ていないなと思い、涼しいうちにと部屋を飛びだす。
いつもの八百屋さんで、荷台から野菜を降ろしているおじさんおばさんと挨拶を交わす。
通勤時間まえ、時折タオル片手に散歩のひととすれ違うくらい。
駅前も若宮大路もがらんとしていて白っぽい。
段葛を歩いていても二、三人と犬一匹、行き倒れの蝉、鴉、雀。

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鳥居をくぐり西がわの太鼓橋を渡ると平家池、白い蓮と県立近代美術館が見える。
ル・コルビュジエの弟子である坂倉準三設計の建物は、すっきりとしてモダンに見えながらも
まわりりの木々や土、池と寄り添い、八幡宮境内に根をおろしている。
池のうえを渡りレンガのアーチをくぐるガラス張りの展示室は、ずいぶんまえから
耐震上の問題を理由に閉鎖されたままだ。
その佇まい、水面に映るすがたはポエティックでもある。
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2016年には八幡宮との借地権が切れるため、神奈川県は財政難とのこと、継続せずに更地にして土地を返すという。
あと二年ほどでこの坂倉準三作品も、日本初の近代美術館も地上から消えてなくなるとは、諸行無常なり。
もう一方の池、弁天さまが祀ってある源氏池の蓮も見たりして藤棚のベンチでしばしひと休み。
源氏池周辺にはバズーカ砲のようなカメラを携えたおじさん達があちらこちらでうごめいている。
ラジオ体操がはじまるまえに退散、自室の窓を開け放ち、市場で買ったミディトマトで喉をうるおす。
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nn

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