かえりみち

陽が傾き始め、金色の光線も角度をなくしてしまった頃、二階堂のAtelier Kikaをでて、歩きだす。
大塔宮の大きな樹がわさわさ揺れるのを背に。
個展の会期中はアルバイトも夏休みで、往路復路はバスにも乗らず、経済して汗をかきかき歩いて通う。
そう、歩くのが好きだ。
風や匂いや景色、街の 人の 空の 表情を、自身のテンポでキャッチする。
遥かむかしのギリシア哲人になったつもりで、歩きながら詩作や思索をする。
ふねにすむ鳥のように、普段は地に足などつけていないので、歩くとは、なんとこの地上に
居ることを実感させてくれるものかと、足裏で地球を掴みながら進む。中身はしかし、
直ぐにでも地上から離れたところに想いを馳せてしまうんだけれど。
丁度、八幡さまからの若宮大路と沿うように裏路次をゆっくりと往く。
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絵本にでてきそうな葉っぱの家を見つけると、いつも愉快な気分になる。
住んでいるひとの奇骨に感心する。
ちいさな社の、幹を伐られた樹の陰を思う。
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その樹のまえで、どうしたものかと立ち尽くす。
黒板塀に囲まれた「おさらぎ」邸を過ぎる。大仏次郎のお家だ。
野尻と表札があるのは本名が野尻さんで、星の賢人、野尻抱影はお兄さん。
細い路次はすれ違うひともまばらだ。大抵はTシャツ短パンビーサンで、マーケットの袋を下げて歩きか自転車。ときどき、清楚な白い麻のワンピースに日傘を差した年配の女性とすれ違う。
背筋はぴんと、小さなちいさなハンドバッグを持ったおばあさま。
いつだったかの往路には、Atelier Kikaの麻里子さんが自転車で“お先に!”と追い越してったっけ。
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大きな瓦屋根のうえ、月は左を向いている。
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教会の裏を通り警察署の脇にでると、往来の賑やかな、ゆったり幅広の大路にひょっくりとあたる。
ここまでくると、海の風に切り替わる。
nn

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